北斎展を観に行く2
2015年 02月 11日
夏はボストン美術館のコレクション展だったのだけど、今回はおそらく個人の所蔵品などを借り受けたものを展示してあるのだろう、「刷り立て?」というような色鮮やかな物は少ないけれど、北斎のデビューから最晩年まで、時代もジャンルも網羅し尽くしたような見応えのある展覧会だった
(とにかく作品数が多くて途中でちょっと途方に暮れた(笑))
紙が黄ばんだり、退色したり、シミがあったりするものの、全て二百年程前の作品ばかりなのだと思うと、その年月の重みに目眩がする
きちんと掛け軸に仕立てられた肉筆画など、少し日に焼けていたりするところが、かえってちゃんと床の間に掛けられてその家で愛されていたんだなあ、と思わせるものがある
北斎はいわゆる流行画家でもあっただろうから沢山作品は流通していただろうから単純に「好き」だから所有していた人も沢山いただろう
まさか二百年後にこうして美術館で鑑賞されるような事になるなんて当時の人達は思いもしなかっただろう
肉筆画はともかくとして、浮世絵は要は「印刷物」(ちょっと乱暴な表現だけど)でいわゆる「唯一無二の物しか無い」という事は無いから「同じ物」は沢山ある
今回もおなじみの「赤富士」や「神奈川沖浪裏」など夏のボストン美術館のコレクション展で観たのと同じ物が沢山あったのだけど、「あ〜、これ見た見た」で終わらせない迫力がやはりある
必ずと言っていい程新しい発見があって楽しい
「忠臣蔵」のシリーズはかなり退色していると思われるのだけど、色彩の鮮やかさに目がいかない分、かえってその描線の繊細さ等、本質的な美しさが浮かび上がってくる(あ、墨汁って凄いとも思った、全然褪せてないのだもの)
忘れそうになるのだけど、これらは木版画で、しかも分業制で作られた物なのだ
普通、間に入る人が多くなれば成る程、だんだん残念な感じになると思うのだけど、どれだけ高水準な技術を持つ人達だったのだろう
今回の展覧会は北斎の作品だけでなく、彼の弟子たちの作品も展示されている
北斎の作品の細やかさや構図の大胆さからかなり気難しい人柄を想像するのだけど、思っていた以上に弟子の数が多くて、それも江戸だけでなく名古屋や大阪等にも弟子がいた、という事実にちょっと驚く
単純に売れっ子だから、という訳ではなく人柄が慕われていたのだろう
作品だけでなく、北斎という人が丸ごと愛されていたから今日まで沢山の作品が残っているのだろう、と思った
もう一つ面白い展示作品があった
浮世絵が「海外にジャポニズムブームを巻き起こし」という知識はあるし、それっぽい作品も教科書などに掲載されているけれど、今ひとつピンとこなかった
今回「富嶽三十六景」に影響を受けて制作されたフランス人画家のアンリ・リヴィエールの「エッフェル塔三十六景」という作品が展示されていた
エッフェル塔の建設途中の様子とか、どこかにエッフェル塔が描かれているパリの風景とか、その当時のパリの様子が生き生きと切り取られた作品集
「おフランスのかほり」は漂うものの、成る程、影響を与えるとはこういう事なのね!という作品だった
でも、もし北斎が当時フランスに行ったならもっと凄い作品を作ったんじゃないかな?なんてちょっと意地悪を思ったりして(笑)
もし、今回展示された作品を一つだけ自分のものにできるなら?という事を考えながら美術展を観に行ったりするのだけど、今回は「北斎漫画」かな
一冊でいい(笑)
二冊程中を展示してあったのだけど、是非、続きを見てみたい
夏に観に行ったのとは別の美術館、同じように公立で街の真ん中にあるのにこちらは夜の8時まで開いている(入館は7時半まで)ので、仕事帰りでもゆっくり観に行けるのがありがたい
土日が休みの仕事をしているとどうしても美術館に行くのは土日祝日になる
人気がある美術展なんかだと何を観に行くんだか?って感じになるから億劫になるんだけど、こうして平日の夕方〜夜に観に行けるのは色々裾野も広がると思うのだけど
ま、色々難し事とは思うけどね
https://www.youtube.com/watch?v=y66vaaGlD8I
控えめながらどこかミステリアスな曲の雰囲気。物語性を感じさせるタイトルにも気を惹かれるものがありますが、詩人ヴェルレーヌの「優しい歌」という詩集の1節から取っているようでした。それにつけた歌曲もある。
https://www.youtube.com/watch?v=PQc4UZg5SSo
http://homepage2.nifty.com/182494/LiederhausUmegaoka/songs/F/Faure/S1521.htm
ただし、この歌のテキストはちっともミステリアスでなくて残念。この慎ましくも美しいハープ曲と歌曲は全く別物と見るべきか。